行政訴訟とは、行政事件訴訟法に基づき、行政庁(役所)の行政行為、行政処分等に対して違法を主張して行政庁を相手として訴訟を起こすことです。
行政不服申立てとは、行政訴訟と似ていますが、訴える先が裁判所ではなく同じ行政庁または上級の行政庁になります。そして、行政庁の行政行為、行政処分等は、違法行為のみではなく不当な行為も不服申立てをすることができます。
行政庁の違法行為に対して行政不服申立てをせずに、直接に行政訴訟を行うこともできますが、行政庁の不当な行為に対しては行政訴訟はできません。なぜなら、三権分立により行政行為の不当かどうかまで裁判所が判断できないからです。
裁判所は、合法か違法かを判断する機関であり、行政庁に対して必要以上に介入することは越権行為になり良くないのです。
そして、殆どの場合は、行政庁は違法な行政処分をすることはなく、不当な行政行為も稀に行われることがあるのです。その不当な行政庁の行為に対して国民を守るのがこの不服申立て制度なのです。しかし、我が国は制度のみでなかなか利用されることが少ないのです。
国民は、行政庁の不当な行為から、四つの法律により守られています。
行政書士法、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法がそれです。
行政官の行政手続きの違法、不当を事前に防ぐのが、行政書士法と行政手続法です。
1 行政書士法は、「行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もつて国民の権利利益の実現に資することを目的とする。」と定め、国民に対して行政の円滑な実施(手続きを速やかに行うため)を担保し、専門家である行政官に対して専門家である行政書士が素人である国民を代理して、行政官と行政書士が対等の立場で対峙し手続きが進むのである。
2 行政手続法は、「行政運営における公正の確保と透明性(・・・)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資する」と定められ、行政手続きの公正円滑な実施が行われる国民に対して担保している。
3 行政不服審査法は、行政手続きを国民がおこなったときに違法はたは不当な行為があったと思慮するときに申立てを行うことができますが、手続きの事後に、手続きを保障する制度です。
4 行政事件訴訟法は、行政庁の違法な行政行為に対して、訴訟を提起することができます。しかし、行政庁の不当な行為は行政訴訟はできません。
以上が原則ですが、行政庁の行為は違法な行為はまずありません。不当な行為は少ないですがあります。ただ、違法か不当かの判断ができない事案もありますが、行政不服申立てを利用することが良いと考えます。
我が国は官尊民卑の歴史があり、現代においても役所の判断に従ってしまう傾向があります。
行政官の恣意で手続きが行われるようでは民主主義ではありません。